あなたたちはカラオケで食っていきたい訳では無い

私が初めて認識したところではNiziUのNiZiプロジェクトから、BE:FIRSTのTHE FIRSTと

いろいろオーディション番組をやってきた日テレですが今回はなんとあのアヴちゃんを

メンターとして新たに迎えてやるということでいやはや……

他にもYOSHIKIのバンド企画や&TEAMの企画なんかもやってたかもしれませんがいまい

ちバズってないのと興味がないのでその辺は詳しく知りません。

こうして書いてみるとNiZiUとBE:FIRSTに関してはオーディション番組である段階から

熱心に見ていたのにも関わらず番組名よりもグループ名が先んじて調べないと自信を持

てない始末ですから二組とも非常に名前が売れ、商業的にも大成功です。

音楽番組の常連でお茶の間にも着々とその名を浸透させているこの二組は

若い女性からの支持を中心に一大ムーヴメントを起こしているプデュ系(ラポネ系とい

うべきか?)とはまた違った存在感と安定感を獲得しているのでやっぱりテレビの

バックアップは未だに大きいなと感じる次第でございます。

そんな独自のアイドルオーディション番組の基盤を築き始めている日テレで新たに始ま

ったのがこの「0年0組」なのです。わたくしは女王蜂をアーティストとして高く評価し

ていて、件のチェンソーマンEDも期待外れが続く中で本当に満を持してのいい仕事ぶり

に感服したのですが……

個人的にはオーディション番組アンチでありアーティストのむやみなメディア露出を嫌

う私はこの告知を見た瞬間食べ合わせが悪い!と苦虫を嚙み潰したような顔に

なってしまったわけです。

周知のとおりアヴちゃんはカリスマ性がすごく強いアーティストで、その神聖化に水をさすのがよりにもよってオーディション番組かよと勝手に私は失望してしまったのです。

しかしアヴちゃんの作品が素晴らしいのはかわりませんからその情報は避けるようにし

てアヴちゃんの音楽だけ聴くようにしていたのですが、たまたま今日CMで流れた

「皆さんはカラオケで食っていきたいわけではない」というアヴちゃんのひとことが

耳をとらえて離しません。

私がオーディション番組に求めていた「ヒリヒリ感」はこれだと直感しました。

それは仲間同士のぶつかり合いや葛藤で生まれる緊張感では、トレーナーからの厳しい

叱責に顔をこわばらせ弱気になる練習生の姿ではありません。

オーディション番組にわざとらしいドラマや誇張が必要なのは理解しています。

だからわざわざうまくできないところを映して、厭味ったらしく𠮟責させて、困ってい

るとこだとか泣いてるとこだとか映すんです。こんな貧乏くさいシーンは私は見ていて

興ざめの極みですがそれが視聴者にとっての感情移入の糸口になり番組側にとっては

路線に乗せることでもあり「努力」で体裁をたもつことです。

もしトレーナーが「あなたたちはカラオケで食っていきたいわけではないのよ」

と言ったのだとしたらあぁビビらせたくて言ってるんだなとしか思いません。

こんな言葉はアヴちゃんという第一線を生きるアーティストが言うから重みがあるので

す。

私は企画を知った当初とは全く違う新たな期待感と共にTVerで同番組を視聴しました。

そのうえで、オーディション番組を忌み嫌う者、アイドルエンタテインメント考察した 

がり者、スター概念について思いを馳せし者、なによりアヴちゃんのファンに絶対に

見ていただきたい番組として推薦します。

この際私立何たら学園みたいなサムい設定はお飾りですので無視してもらって構いませ

ん。そしてもはやオーディション番組のだいご味である候補生の吟味すら要らないです。

それよりこの番組で発せられるアヴちゃんの一言一句に集中してください。

うまいひとなんて世の中にいっぱいいるから。私が欲しいのは「ヤバい人」

オーディション番組でそれを見出すのは本来的に難しいと思いつつもその言葉で

アヴちゃんの「スター観」がカチッと自分にはまるなと嬉しくなった矢先に

作りたいのは「オルタナティブ歌謡舞踊集団」。ズコーッとなるわけですが

ここがアヴちゃんのかわいいところでいいところじゃないですか。これが面白くない

訳ありません。オルタナティブ歌謡舞踊集団、このギャグみたいな響きがひとつの個性

的な人格をもったアーティストがやることの意味というか商業的になりすぎないチャー

ミングさがいいバランスだと思います。

そして質問コーナーでの具体的に想定している人数は?という質問。

アヴちゃんは5or 7 or 9 と明言しました。アヴちゃんのなかで最強の係数がある

けどそれに状況を加味しながらこの数字で見ていくとのこと。

アイドルヲタクとしてはなんかわかるような、でも根拠はどこからなのか非常に気にな

る感じです。そういう感じでアヴちゃんがグループというものをどう考えながら

どう構築していくのかという「運び」が非常に楽しみな番組です。

正直それがうまくいってなくても、帰結としてさえないグループが出来上がってもいい

のです。アヴちゃんの審美眼で選び取っていく「過程」が見たい。

ここにきてオーディション番組本来の機能に私が適応できると思いました。

更にこの番組では今のところアヴちゃんはその人生を惜しげもなく開陳して

手の内を明かしてくれています。アヴちゃんの表現に対する姿勢など

彼女を一人のアーティストとして解剖していくうえで欠かせない資料として

も今後間違いなく重要になってくると思います。

アヴちゃんによるスター観と彼女自身を語る言葉の両面で寺山修司ばりのアフォリズム

がバンバン飛び出しますのでそれを聞いてるだけでドキュメンタリーへの好奇心はたい

てい満たされる感はありますがもはや脇役して練習生の皆さんがオーディション番組の

体裁をとってくれますのでストレスなく見れますよ。

このように正直私はこの番組をアヴちゃん主役としてこの番組を見る気満々ですが、

アヴちゃんを主役に据えてみる分練習生がニュートラルに見れるとはいえ

この高い要求に彼らがついてこれるのかには勿論注視していくつもりです。

もしアヴちゃんに唯一プロデューサーとしての手腕が試されるところがあるとすれば

どれだけうまく彼らを調子に乗せられるかどうかだと思います。

それをすごくうまくやったのがSKY-HIであり成功したのがBE:FIRSTだと私は思ってるので。

ただし彼とアヴちゃんの方針には決定的に違うところがあります。

下手でもいいし、あかんかなって思う時もあると思うけど諦めないで。

この言葉に掛け値なしと私は信じてます。

オーディション番組には絶望してるけど、こんなオーディション番組のスピンオフみた

いな深夜番組でアヴちゃんみたいなpure talentの化身みたいな人がどうみても凡な

子たちを力業で化け物にするところが見られたらこんなうれしいことはないと

思って期待しています。